召喚!じゅらい亭日記 −登場編−

小説(?)初挑戦ですっ♪
投稿者> クレイン
投稿日> 04月08日(水)23時34分19秒


召喚! じゅらい亭日記 −登場編 T− 



………今日も、俺は“じゅらい亭”にいた。

……めずらしく、俺はウトウトしていた。寝起きの悪い俺は外ではなるべく
寝ないようにしているんだけど。

…夢を見ていた。ついこの間のことだ…。

  “ここ”にやってきたのは、ただの偶然だった。たまたま立ち寄ったこの街で、
たまたま紹介された宿がここだったんだ。ただ、“じゅらい亭”を教えてくれた
ヤツはなぜだかニヤニヤしていたっけ。いまならその笑いの意味がわかるけど、
その時の俺にはわからなかったんだ。

…そう、あれは数ヶ月前の夜。あたりはもうすっかり暗くなり、連なる商店も
軒並み店をしめていた。ときおり明りが漏れているのは、いわゆる“大人のお店”
か酒場、それから宿屋くらいだった。俺は、宿を探して一人の男に声を掛けた。
どんなやつだったかって?特に特徴も無いやつだったよ。ただし、ひどく酔っ払って
いたっけ。今考えると、なんであんな酔っ払いに声をかけて、しかもその言葉を
信用する気になったのか………??いやいや、信用して良かったのかもしれない。
おかげで俺は“じゅらい亭”と、みんなと出会えたのだから…。

“じゅらい亭”はすぐに見つかった。そいつが言うには、
「宿屋ぁ?それならぁ、この先をまっすぐ行くと左側に酒場兼宿屋の“じゅらい亭”
ってのがあるぜぇ〜(うぃ〜、ヒック)。おにいちゃん、そこは“サービス満点”
だぜぇ〜、ヒッヒッヒ〜(ヒック)。」
…誤解しないようにいっておくけど、“サービス満点”って言葉に惹かれたわけ
じゃないぞっ(あせあせっ)。俺はけっしてそういうのは………好きだけど。
まぁ、男の言っていた“サービス”が、どんなモノかはその後すぐに思い知らされる
事になったんだけど。

ともかく、俺は“じゅらい亭”のドアを開けた。そこで繰り広げられていたのは…!!!


「おらぁっ!滅火っ!!!」
「やったでござるな、幻希殿っ!雷電砕!!!」
「ひあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああっ!!!(滅)」
「ああっ、なぜゲンキさんがっ??」
「サンマ、おいしいにゃぁっ♪」
「今日も平和ですね(笑)」
「あ、じゅらい亭へようこそっ♪」


阿鼻叫喚の地獄絵図(?)だったっけ。いわゆる、“暴走中”ってやつだった。
でも俺は、声を掛けてくれたカウンターの中のエプロン姿の男性の方に平然と
歩いていき、席に腰掛けた。
「こんちわっ♪ ここはいつもこんなに騒がしいんですか??」
とと、俺の“書き言葉”と“話し言葉”が違うっていうツッコミは勘弁してくれ。
俺の話し言葉口調で書き留めると、シリアスな展開にはなりようがなくなっちゃう
からな。

「そうですよ♪ここはいつもこんなものです♪」
「お客さん、めずらしい方ですねぇ、“暴走中”にじゅらい亭に入ってきて逃げない
なんて…?」
黒髪サラサラストレートの可愛らしいウェイトレスさんが不思議そうに俺に声を掛けた。
そこで俺は…。
「ところでお嬢さん、可愛いですねっ♪ こんどデートしません♪??」
と、いきなりナンパを始めた。
「けっこうですっ!」
あっさり袖にされる俺。でもこんなことには全然動じない。だてに“電脳ナンパ師”
は名乗ってないぜっ!

「でもお客さん、ホントに余裕がありますねぇ。私はマスターの“じゅらい"と
申しますが、もしよければお名前を聞いてもかまいませんか??」
すこしこめかみをピクピクさせながら(ウェイトレスをナンパされれば当然か?)、
マスターが俺に聞く。
「おれは………」
と言いかけたところで、
「ソルクラッシャー!!!」
黒髪ロンゲの少年がヤケになってそこらじゅうに放った光術(の様なもの)が後ろ
から迫ってきた!その瞬間、俺は振り向きざま腰のホルスターに収まっている
ハンドCOMP“スターファイア”を引き抜き叫んだ!!
「召喚!!ヴィシュヌっ!!!」
すると、“スターファイア”の先端のプロジェクターの中に表示された魔法陣から
光が迸り、その光の中から一人の女神が現れる!この娘が俺の召喚神筆頭の
“魔神・ヴィシュヌ“だ。ヴィシュヌは光術と俺のあいだに光り輝く障壁を作り出し、
それをあっさり弾き返した。
「俺は、“電脳召喚師”クレインですっ♪ まぁ、今のを見て頂ければ分かると思います
けど。で、こいつがヴィシュヌ、俺の“召喚神”ですっ♪」
「はじめまして〜、ヴィシュヌです〜♪」
なんとも間の抜けた自己紹介だ。この娘はいつもこんなしゃべりかたしか出来ないんだ。
でも、容姿は一目で人を惹きつけるには十分すぎるほど可愛い。


…はた、と店内の騒ぎが止まった。さっきまで大騒ぎをしていた透明な剣を持った
剣士風の男と前髪で片目を隠した男、それから黒髪ロンゲの少年が相次いで駆け
寄ってきた。
「拙者、焔帝でござる。ヴィシュヌ殿、よろしく!」
「レジェンドです。“レジェ”と呼んでくださいね!」
「ゲンキです♪ ヴィシュヌさんよろし……ひぁぁぁぁぁぁっ!?」
みごとにヴィシュヌにばっかり自己紹介する3人。と、いきなり「ゲンキさん」に
右手から生じさせた灰色の炎をぶちあてて黒焦げにさせて、真っ赤なバンダナを頭に
巻いた女の子が俺達の前に進み出た。おおおっ、めちゃ×2かわいいっ!?そこで、
さっそく俺は彼女をナンパすることにした。
「か〜のじょっ、すっごくかわいいねぇっ♪ これから…おわぁっ!?」
言いかけた俺に、いきなりその女の子は問答無用で灰色の炎をぶちあててきた
(ヴィシュヌがさっき張った防御結界があったから無事だったが)。乱暴な娘だなぁ、
でもそんな照れ屋さんなトコがかわいいぜっ♪とか思っていると、”その娘”が
しゃべりだした。
「あ・り・が・と・よぉ〜、誉めてくれて!!(ぴくぴく)」
おおっ!?声を聞いて初めて気づいたんだけど、なんと“男”だったらしい。
こんな可愛い男がいるとは……。世の中は広いっ!!(ぐぐっ)
っと、明後日の方向をむいてガッツポーズを取っている俺に再び灰色の炎=“滅火”
を食らわそうとする可愛い男。ところが、そこでマスターのじゅらいさんが止めに
入ってくれた。
「まぁまぁ幻希さん、クレインさん……でしたっけ? も、新人さんなんですから
そのくらいにしときましょう♪」
セリフだけ聞くと大変にこやかだが、なぜか黄金のハンマーを頭上にたかだかと
振り上げている。
「ちっ、わかったよじゅらい。…とにかく!俺は、お・と・こだ!!名前は
“幻希”、覚えておけよっ!!」
その時俺は、「分かったよ。」と言った後に続けて「かわい娘ちゃんっ♪」と
言いそうになるのを必死で堪えなくちゃならなかったっけ。



>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>



俺の“じゅらい亭”初日はこんな風だった。ひどい目に会いそうになったわりに、
俺はじゅらい亭に滞在する事にした。
そのワケは…………………。

………………ま
え?
……………さま
なに??
………じんさま
JINNさん??(爆)

「ご主人さま〜!!!!!」

「どわぁっ!?…な、なんだ、ヴィシュヌか。……ふわぁぁぁぁぁ、良く寝たっ♪」
長く眠れれば、俺もそれなりに機嫌が良い。あくまで“それなり”だが。目をさますと、
めずらしくヴィシュヌが焦った顔で俺の事を覗き込んでいた。ふと、周りを見渡すと…。

「おらぁっ!滅火っ!!!」
「やったでござるな、幻希殿っ!雷電砕!!!」
「ひあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああっ!!!(滅)」
「ああっ、なぜゲンキさんがっ??」
「サンマ、おいしいにゃぁっ♪」
「今日も平和ですね(笑)」

まただ(笑)この所為であんな夢を見たのか。苦笑する俺にヴィシュヌが声を掛ける。
「ご主人様〜、お仕事に遅れちゃいますよ〜、また広瀬さんに怒られちゃいますぅ〜!」
そうか、今日は仕事の依頼が来てたっけ。なぜか増え続ける借金(ここに来るまでは
なかったのに??)のせいで、最近俺までゲンキさん達と一緒に広瀬さんに仕事を
斡旋してもらってるんだ。
「そか!よし、行くぞっ、ヴィシュヌっ♪」
と、俺は勢い良くじゅらい亭の両開きのドアから飛び出していった。
「いってらっしゃい、クレインさん♪」
じゅらいさんが後ろから声を掛ける。慌てて追いかけるヴィシュヌ。
「あぁ〜、待ってください〜、ご主人様〜!」


………俺のじゅらい亭での毎日はこんな風に過ぎていっている。もうしばらくここに
留まるのも悪くないと思う。思い出しかけていた“俺がじゅらい亭に滞在するワケ”
は、間違いなく「“常連達”が気に入ったから」だろう。じゅらい亭はとても居心地が
いい。もう少し、もう少しだけならかまわないハズだ。もう少しだけなら………。



ひとまず、終



■INDEX■