一蓮托生でいこう!      作:ニシジュン

		 



		 広がる空。風に揺れる草原。のどかな風景。

		 ミケール大陸より西方にある小さな島、アルクゥ。人口三百人に満たないこの島になんとも似

		  合わない絶叫が響いていた。

		「ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

		「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

		 暗い洞窟の中。槍の雨に追われる二人の男女。

		「なんでなんでなんでぇ?」

		「お前がスイッチを踏んだんだよ!」

		「そんなのわかるわけないじゃない!」

		「わからないから罠なんだ!」

		 二人は睨みながら、叫びながら、心臓がはち切れそうになるぐらいに走る。上下左右から突き

		  出る槍を避けながら、必死で出口を目指す。

		「やった! 出口だ!」

		「また戻って来ちゃったね」

		「お前のせいだろうが!」

		 最後の力を振り絞り、二人は光の見える洞窟の出口に頭から滑り込んだ。

		 間一髪。男の股間のすぐ下には、長く鋭い槍が刺さっていた。

		 ふらふらになった二人は、近くの木陰まで歩き、大木に寄りかかった。

		 一息吐いて、青年魔導師「ジェイク・アイスピック」は、隣でぐってりとしている少女の耳を

		  掴んだ。

		「お前が悪いんだからな、リィス!」

		「だってだって、私は何にもしてないのに勝手に槍が振ってきたのよ」

		 リィスと呼ばれた少女は涙目になって反論した。

		「だぁかぁらぁ、お前がスイッチを踏んだの」

		「でもねでもね、スイッチは踏んだかもしれないよ。でも、槍が振ってきたのは関係ないんじゃ

		  ない?」

		「ばぁか! そのスイッチが槍の噴射口に連動してるんだよ!」

		「……あ、そうかぁ」

		 ようやく仕組みに気が付いたリィス。ジェイクはこれ以上文句を言う元気もなく。起き上がる

		  元気もなく。頭の中で愚痴を考えることしかできず。

		(もう嫌だ。なんでこんな奴と冒険しなくちゃならないんだ。ドジだし。ノロマだし。大食らい

		  だし。顔だって、ぶさ……)

		 目を開けると間近に覗き込んでいるリィスの顔があった。ぽっちゃりと少々抜けている顔をし

		  ているが、少女の面影を残した可愛い顔をしていた。

		(……いく、じゃないよな)

		「何を考えてるの?」

		「ん、お前ってブサイクな顔してんな。ってよ」

		 と、ついつい意地悪をしてしまう。リィスはぷくっと頬を膨らませ、怒った「ふり」をした。

		 二人はミケール大陸にある小さな村の幼なじみだった。ジェイクは幼い頃から冒険者に憧れ、

		  ついにそれを成就した。

		  リィスというおまけ付きで。これがジェイク、唯一の汚点。彼にはリィスがどうしても必要な

		  存在だった。

		 ジェイクは素晴らしき魔法の才能を持っていた。特に氷系統の魔法は、英雄さえ恐れをなすと

		  いう。しかし、彼にはそれに耐えうる魔法力(一般にいうMP)がなかった。一回でも魔法を

		  使うものなら昏睡状態となり、戦闘どころではないのである。そこで必要となるのがリィスで

		  あった。彼女は魔法は使えないものの、異常なほどの魔法力を持っていた。そこで、ジェイク

		  は彼女を媒体として魔法を使うのである。

		 リィスがいなければ魔法を使えない。つまり、冒険者として仕事をすることができない。

		 二人でひとりの冒険者なのであった。

		「ねぇねぇ、ご飯食べようよ」

		「洞窟に入る前に食ったろうが。それに食料はもうないだろ」

		「私、持ってるよ。ほらほら、干し肉」

		 と、自慢げにコウベウシ(という動物)の薫製をジェイクに見せる。

		「ばぁか。それは、非常用の食料だ。腹が減ったからって、すぐ食べるものじゃないんだよ。

		  冒険者の基本だろ」

		「ジェイクの意地悪ぅ」

		 まったくもって、リィスは冒険者に対して無知であった。知識もない。自覚もない。冒険に出

		  るときはいつもピクニック気分である。

		(早く伝説の魔法石を見つけて、こいつとおさらばだ)

		 ジェイクは伝説の魔法石を求めて、このアルクゥ島を訪れたのである。この魔法石は強大な魔

		  法力の媒体で、装備すれば魔法が使いたい放題というおいしいアイテム。足手まといのリィス

		  と別れるためには、どうしても魔法石が必要だ。

		「よっし、も一回洞窟に入るぞ」

		「ええ、もう疲れたよぉ」

		 ぐずるリィスの腕を引っ張り、洞窟へ向かう。

		「いいか。俺の後ろを歩け。余計なものは触るな」

		「うん」

		「疲れたとぐずるな。腹が減ったとぐずるな。俺の邪魔をするな」

		「う、うん」

		「変な妄想をするな。歩きながら寝るな。急に俺に抱きつくな」

		「う……うん。わかった」

		 頷いてはみるも、自信はない。どれもこれも、つい行動してしまいそうなことばかり。

		 ジェイクは腰に横差しされたロッドを抜くと、気合いを入れるために平手で自分の頬を叩いた。

		「よっしゃ、行くぞ」

		 カンテラに火を灯し、奥へと進む。洞窟は一本道で迷うことはなさそうだ。もっとも、一度通っ

		  た道なので不安はない。

		 リィスがコウモリに怯えながらも、しばらく進んで、ジェイクが立ち止まった。

		「ほら、見てみな。お前が踏んだトラップスイッチだ」

		 地面には正方形の小さなパネルがあった。土色で、地面と区別がなかなか付かない。リィスが

		  しゃがんで人差し指で触ろうとする。

		「ば、ばか! 触ったらまた槍が飛んでくるぞ!」

		 ビクッとしてリィスの動きが止まる。額には冷や汗が浮かんでいた。

		「ごめん、押しちゃった」

		 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

		「は、走れぇ!」

		 今度は出口ではなく、奥に向かって走り始めた。同じことをすることは能がない。

		 案の定、槍の雨霰。リィスの腕を引っ張り、走り走る。

		「このバカ女! どうしてお前はこうなんだ!」

		「だってだってぇ、触りたくなっちゃたんだもん」

		「穴だ! 飛び込むぞ!」

		 二人は突然現れた横穴に飛び込んだ。ばっしゃーんと水が跳ねる。そこは大きな洞窟湖だった。

		 ジェイクは浮かび上がり、近くに小さな岩島を発見した。何とか泳いで岩にしがみつくと、次

		  はリィスの姿を探した。

		「あいつって泳げないんだよな。確か」

		 焦るジェイクはもう一度水に飛び込んだ。目を開け、水中を探す。水は澄んでいて、遠くまで

		  見渡すことができた。湖底に沈む、一体の影。リィスだ。

		  もう一度水面に顔を出し、息を思い切り吸い込む。そして、沈むリィスの身体を追いかけた。

		  リィスの沈む速度の方が早い。

		  きっと肺に空気が満たされていないのだろう。

		「こうなったら……」

		 ジェイクがロッドをリィスに向けた。気を集中して呪文を唱える。

		「……コールド!」

		 ロッドの先から水が氷へと変化する。氷は放射状に広がり巧い具合にリィスの下へベットのよ

		  うになった。氷は水に浮く。

 		  つまり、リィスの身体も一緒に浮くだろう。ジェイクは安心して水面を目指した。

		「ぷは! ……ぜぇぜぇ」

		 ジェイクの息が荒い。リィスの助けをなしに魔法を使ったためだ。意識が朦朧としている。

		「くそ、最小の力で撃ったのにこの様かよ」

		 どぽん!

		 隣に氷に横たわるリィスが浮いた。なけなしの気力を振り絞りながら、ジェイクはリィスを岩

		  島へと運んだ。

		「はぁはぁ、この足手まといが」

		 リィスの胸に手を置く。心臓は動いているようだ。しかし、呼吸はしていない。

		「こ、こういうときは、じ、人工呼吸だよな」

		 呼吸を整え、リィスの顔をまじまじと見る。そして胸の鼓動が高鳴る自分に気が付いた。

		「ばか、相手はドジでノロマで大食らいのリィスだぞ。これは命を助けるためにやるんだ」

		 何度も言い聞かせ、口づけを正当化しようと努力する。リィスの顔に自分の顔を近づけると、

		  さらに心臓は膨れ上がっていた。

		 唇と唇が一つに重なる。

		「……ん」

		 リィスは目を開けていた。

		「げほげほっ!」

		 口からは飲み込んだ大量の水が吐き出される。もちろんジェイクの顔にぶちまけてしまったの

		  は言うまでもない。人工呼吸が始まる前にリィスは

		  目覚めてしまった。なんと気まずいことか。

		「…………」

		 ジェイクはそっぽを向き、濡れた服を絞っている。

		「あわわわわ、キスしたでしょ。ね、したでしょ」

		 なんとも元気なリィス。嬉しそうに何度もジェイクに聞き返している。

		「うるさい。人工呼吸だよ。お前に気があったわけじゃ……」

		 ジェイクの声に張りがない。病人のようだ。それに構わず、リィスは大はしゃぎだ。

		「ああああ、ジェイクのHぃ」

		「ばぁか。違うって、言っ、てる、だ、ろ……」

		 ふっとジェイクの意識が遠のいた。もう、魔法力が残っていないのだろう。

		 掠れる視界に慌てふためくリィスの姿があった。





		(ジェイクは大きくなったら、何になるの?)

		「冒険者になるんだ。こんな小さな村で終わりたくない。世界中を旅したい。だから、冒険者に

		  なるんだ」

		(じゃあ、リィスも冒険者になる)

		「だめだ。お前はドジでノロマだからな」

		(どうしてどうして。リィスはジェイクのことが好きなんだもん。だから冒険者になるの)

		「普通、好きな人とは結婚するんだよ」

		(じゃあじゃあ、リィス、ジェイクと結婚する)

		「だめだ。俺はお前のこと嫌いだからな」

		(どうして? 私がドジでノロマだから?)

		「そうだ」

		(じゃあ、どうして私を助けたの?)

		「…………」

		(嫌いなんでしょ? どうしてキスするときにドキドキしたの?)

		「……うるさい」

		(本当は私のこと好きなんでしょ)

		「うるさい!」

		(だから、私と別れたくない。だから、魔法石なんて見つからない方がいいと思ってる)

		「黙れ! お前は俺を嫌いだし、魔法石は喉から手が出るほど欲しいさ! お前とオサラバでき

		  るんだからな!」

		(…………)

		「そうさ。昔から俺にまとわりついて邪魔なんだよ。足手まといなんだ。だけど、俺はお前がい

		  なくちゃ冒険者でなくなる。それが苦痛なんだよ!」

		(私と魔法石、どっちが大事?)

		「……決まってるだろ。魔法石だ」





		 温もりを感じる。身体に。唇に。

		 目を開けるとそこにはリィスがいた。唇を合わせ、目をつぶっているリィスの顔が。

		「えへ、これでおあいこよ」

		「……ちっ」

		 不機嫌にジェイクは起き上がった。袖で唇を拭く。

		「……怒ってるの?」

		「…………」

		「ごめんなさい。私いつも足手まといでドジでノロマで、ジェイクの邪魔ばっかり」

		 目に涙をためながらリィスは、謝った。

		「もういい。ここで魔法石が見つかればそれで終わるんだ」

		 夢の中でそれを自覚した。ジェイクはもやもやした気持ちの中、先に進むべく次の道を探した。

		 二人がいる小さな岩島。後方には飛び込んできた横穴がある。そして、湖の向こうにはうっす

		  らと赤い光が浮かび上がっていた。祭壇のような場所からは光は波のように強弱をつけて湖面

		  を照らしていた。

		 泳いで行くには長い距離だ。泳げないリィスもいる。水中にモンスターが潜んでいるかもしれ

		  ない。

		「魔法を使うぞ」

		「うん」

		 ジェイクはリィスを「おんぶ」した。この形が一番魔法力の伝導率がよいのである。しかも、

		  自由に歩くこともできる。こんな恥ずかしい格好は嫌っているが、魔法を使うためには仕方が

		  ない。

		 ロッドの先を湖面に沈め、呪文と唱えた。魔法力はリィスから供給される。ジェイクは最大の

		  力でコールドの魔法を放った。

		「コールド!」

		 洞窟の気温が肌寒いまでに低下する。急な気温の変化から風が巻き起こった。

		 湖面が凍る。すごい勢いで。液体から固体へとその姿を変える。

		「走るぞ!」

		 ジェイクはリィスをおぶったまま走り出した。氷がいつ溶けるかわからない。

		 赤い光の祭壇まで随分と距離がある。しかも、岩島から離れるに従ってどんどんと氷は薄くなっ

		  ているのだ。

		 初めは地面と変わらず走っていたのだが、徐々に足場が沈み始める。

		「下ろして。私も走る」

		「だめだ。足手まといになるに決まってる」

		「もう、邪魔しないから。このままじゃ、二人とも沈んじゃうよ」

		「うるせぇ! ドジでノロマのくせに俺に口出しするんじゃねぇ!」

		 膝まで足場が沈んでいる。ジェイクは叫び、力の限りを尽くしながら足を動かす。

		「おおおおおおらぁぁぁぁぁぁぁ!」

		 がしっ。

		 身体は沈んでいた。が、腕は岸を掴んでいた。リィスをおぶったまま片腕で身体を岸まで引き

		  寄せる。

		「はぁはぁはぁ」

		 地面の感触を確認するとリィスを置いて大の字に寝転がった。

		「ジェイク、見て」

		 リィスが言うので目を横に動かすと、そこには古めかしい祭壇があった。小さな台座の上には

		  赤い珠を持ったミイラが「いた」。

		「魔法石だ」

		 ミイラの手に乗せられた赤い珠は不思議な光を灯していた。

		 ジェイクは起きあがり、それに手を伸ばした。

		 バチッ! 見えない壁に手を弾かれ、ジェイクは一歩後ろに下がる。

		『魔法石を欲する者よ』

		 頭の中に声が聞こえた。二人は目を合わせ、お互いに聞こえていることを確認した。

		『永遠の魔力を欲する者よ』

		 それはミイラの残留思念だった。

		『我は永遠の魔導師トリト。魔法石を封じる者。我は無二の親友を裏切り、この宝石を手に入れた。

		  無限なる力は我を魔物とした。魔物を殺し、

		 人を殺し、気が付けば周りには誰もいなかった』

		「けっ、そんなのてめぇが悪いんだろうが!」

		『魔法石を欲するか』

		「当たり前だ!」

		「……きゃっ!」

		 リィスの身体が跳ねる。身体が壁に打ちつけられ、そのまま壁にくっついた。

		 ぼうん!

		 現れたのは真っ黒な闇の玉。二つの玉は大小に伸縮し、リィスの前、ミイラの上をゆっくりと

		  動いていた。

		「これは、禁呪ブラックホール……」

		『選べ。人となるか、魔物となるか』

		「簡単にゃ、渡してくれないってわけかよ」

		『台座にボタンがあるだろう。人のままでいたければ右を。魔物になりたくば左を押せ』

		 リィスの命か魔法石かどちらかを選べということだろう。

		(決まってるじゃねえか。魔法石が手に入って大嫌いなリィスとオサラバできるんだ。一石二鳥

		  だろ)

		 だが、ジェイクの手は動かない。迷っていた。この期に及んで何を迷う。

		 魔法石は欲しい。リィスは大嫌いだ。答えは決まっているではないか。

		「ごめん。また私が邪魔しちゃったね。でも、魔法石が手にはいるから、私を許してくれる?」

		 リィスは目の前の闇の玉に恐れることなく言った。このままでは、どちらも闇に飲み込まれて

		  しまうだろう。

		「……ジェイク、魔法石を選んで。ドジでノロマの私なんか生きていても仕方がないから。

		  そのかわり私のことは忘れないでね。

		  ずっとずっと、あなたのことが好きだった私を忘れないで」

		 笑っていた。リィスは優しい笑みを浮かべながら、そっとジェイクの目を見ていた。

		『選べ。人か、魔物か』

		(私と魔法石、どっちが大事?)

		「……そんなもん、決まってるだろぉ!」

		 ジェイクは拳で祭壇のボタンを叩き付けた。

		 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

		 洞窟が揺れる。

		 そして、リィスの目の前から闇の玉は消えた。もう一つの闇はミイラの身体を削っていく。

		『……まだいた。信ずる心を持つ者がまだ存在していた。偉大なる魔導師の卵、お主の名前を聞

		  かせてくれぬか?』

		「俺は……ジェイク・アイスピック」

		 ミイラは泣いていた。出た涙はすぐに乾涸らびた肌に吸収されていく。

		『我が親友シンプ・フランクよ。我を許してくれるか。師匠、我を許してくれますか』

		 闇の玉は魔法石もろともミイラを吸い込んだ。

		『我は地獄に堕ちようとも、その償いをしよう。そして、許しを得ることを信じよう。ジェイク・

		  アイスピックよ。お主は魔法石などなくとも良き魔導師になる。良きパートナーを大切にせよ』

		 それを最後にミイラの声は聞こえなくなった。

		 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

		 洞窟の揺れは止まらない。天井が崩れ、岩が落ちる。ジェイクはリィスの腕を取り、走り始めた。

		「行くぞ!」

		「うん。今日は走ってばかりだね」

		「……そうだな」

		 握るリィスの手は温かかった。この温もりを大切にしよう。自分を愛してくれる人を大切にしよう。

		 ジェイク・アイスピックは、心に誓った。



		  洞窟から抜け出した二人はのどかな田舎道を歩いていた。周りは畑と草原しかない。

		「ねぇねぇ、お腹空かない?」

		「干し肉でも食うか」

		「でも、これって非常食じゃないの?」

		「……いいんだよ。今日は」

		 リィスは腰の鞄から干し肉を取り出した。それを半分にちぎり、ジェイクに手渡す。肉をかじり

		  ながら歩いていると、リィスは立ち止まった。

		「……ありがとう。私を選んでくれて」

		「ばぁか、この世界には魔法石は十六個あるんだ。その内、未発見の魔法石は七個あるんだよ。

		  だから、ここで手に入れらんなくてもチャンスはあるからな」

		「ぶぅ。ジェイクの意地悪ぅ」

		 そしてリィスはジェイクに抱きついて、キスを交わした。お互い干し肉の味がするキスだったが、

		  さしては気にならなかった。

		「あ、村が見える。いこっ!」

		 リィスは元気に走り出した。どんどんと小さくなるその姿を見て、ジェイクはため息を吐いた。

		「もう、走るのはこりごりだ」

		 そのリィスを見る目は、優しかった。

		 アルクゥ島に暖かな祝福の風が吹く。広大な青空が二人を見守っていた。

		 ジェイクは頭をかくとリィスの後を追いかけた。

		「待てよ、このドジリィス!」



		 二人の冒険は、まだまだ終わりそうにない。





	                                     	     完 	









					−−−−−−−あとがき−−−−−−−−



		 この度、じゅらい殿に脅されて読み切り作品を書かせていただきましたニシジュンです。

		 知っている人もいれば、名前だけ知ってるぞという人や、誰だこいつ、と思う人もいるでしょう。

		 以後、お見知り置きを。

		 ご意見、ご感想をお待ちしております。





					      



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