「燈爽ちゃんの下克上♪(前編)」
ある日ある時ある昼下がり。「じゅらい亭」ではいつも通りの光景が繰り広げられてい
た。
「レジェ!そっちに行きましたっ!」
「OK!行くぞ、夢幻張りせん乱舞!」
「遅ぇっ!滅火!!」
「何でオラまでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?(泣)」
大乱闘を始めた(いつものことだ)ゲンキと幻希。その闘いにレジェが加わり、更にボル
ツ将軍(自称だが)が巻き込まれる(これもいつもだろう)。
「いつもの事だがなっ!俺と闘おうなんざテメェにゃ100年はええっ!!」
「何だとっ!それなら試してみろっ!女顔と言っても男だから加減はしないぞっ!!!」
「上等だコラァッ!!滅火!!!」
『ひぃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
いつも通りの幻希の言葉に、いつも通りにかかっていって。いつも通りにやられるゲン
キとボルツ(笑)。何故、いつもボルツが巻き込まれるかは謎だが。その謎すらもこの店
では「そんなものだ」の一言で通る。それもいつも通りだ。
「くっ・・・!流石に強いな幻希。ならっ!行くぞクリーナ!モップ惨斬撃!!」
ゲンキ達がやられたのはとりあえず忘却の彼方に押しやり、いきなり必殺技を繰り出す
レジェ(幻希も滅火使ってたけど)。その手に持たれた意志を持ったモップ「クリーナ」が
一条の軌跡を描き、幻希へと伸びる。
だが。
「うるせえっ!滅炎竜に滅空翔!!全部消しちまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええっ!!」
暴走した幻希のミもフタも無い一撃(二撃?)がレジェごと店の天井を消し飛ばす。
ひゅるるるるるるるるる・・・・・・・・・・・・べちっ・・・。
地面に落下するレジェ。幻希は尚も暴走し、今度は偶然店にいたカオスとの戦闘に突入
する。そして、それらを見守る客達の中・・・ただ、1人だけ倒れたレジェを見つめる者
がいた。それは、使い魔の燈爽だった。
しゅるしゅる
「うーん・・・ゲンキさん?今回の敗因は何だと思います?」
燈爽に包帯を巻いてもらいながら(今日は風花がいないのだ)レジェが既に傷一つ無い
ゲンキに訊ねる。
「うーん・・・?あっ!もしかして、あれじゃないですか?ジャ○プの3大原則!」
「努力・友情・勝利ダスな」
何処からそういう答えを導きだしたか、ゲンキが変な事を言い、ボルツが何故か妙に納
得する。
「何か違う気もしますが、まあ・・・そういう事にしましょう」
少しの間唸っていたレジェだが、別にどうこう言う気は無いらしくその一言で片づける。
と、そのレジェに燈爽が声をかける。
「レジェンド様ぁ?それよりも、また借金が増えてしまいましたよぉ?どうするですかぁ・・・」
そう。さっきの戦闘で店が半壊し、ほとんどの修理費は幻希とゲンキの借金にに加算さ
れたが、レジェやボルツの借金にも少しづつ上乗せされたのである。巻き込まれたボルツ
などは、「何でオラにまで・・・」とぼやいている。
「うーん・・・まあ、そのうち返せるさ。それよりも、今日のバイトはもう終わったのか?」
レジェが燈爽に訊く。燈爽は普段、ここ「じゅらい亭」で歌を唄ってバイトしているのだ。
「はい、今日のお仕事は終わりましたぁ・・・・・・でも、レジェンド様ぁ・・・。これじゃぁ、本当
にいつまでたっても借金が減りませんよぉ?」
何気に不安そうに言う燈爽。
「うーん・・・・・・あ、そうだ。借金を減らすためにお前が2倍バイトするというのはどうだろ
うね?」
少し考え込んだレジェが、そんな事を言う。無論、彼は冗談のつもりだった。しかし。
ドガッ!!
突然、燈爽の放った右の正拳突きがレジェの顔面にクリティカル・ヒットする!
『なっ!?』
突然の燈爽の行動に驚愕する店内の客達。しかし、燈爽はそれを完全に無視し・・・・・・
いきなりクリーナの柄をガシッと掴むと!
「おっ掃除♪おっ掃除♪楽しいですぅ♪」
と妙な歌を唄いながら気絶したレジェを店の外に掃き出してしまった。
「ひ・・・燈爽ちゃん?」
燈爽の謎の行動に思わずゲンキが声をかける。すると、燈爽はこちらを向き・・・・・・。
『ひぃぁぁああああああああああああああああっ!!?』
「おっ掃除♪おっ掃除♪たっのっしっいでぇっすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」
クリーナを使い、瞬時に店内にいた全ての者を外に掃き出す。
「ひっ!燈爽ちゃん!?どうしたの!!?」
最後に残ったじゅらいが訊ねる。すると、燈爽は天を仰ぎつつ言う。
「じゅらい様ぁ・・・・・・これは『下僕上』というものですぅ」
「げ?『下僕上』?」
燈爽の口から出た聞き覚えの無い単語にじゅらいが疑問符を浮かべる。と、燈爽が説
明を始める。
「下の者が、上の者にとってかわるという事ですぅ」
「それは『下克上』じゃ?」
ぴくっ・・・・・・
一瞬・・・ほんの一瞬、じゅらいの指摘に燈爽の動きが止まる。そして、彼女は顔をこちら
に向けると全然別の事を言ってきた。
「時に、じゅらい様ぁ?浮気してませんかぁ?」
何故か殺気を放ちつつ問う燈爽。じゅらいは、少しばかりびびりながらも、
「し、してないよっ!?」
と答える。すると、燈爽はクリーナを天にかざし、「そうですかぁ」と笑顔で言う。思わず
ホッとするじゅらい。だが。
カッ!!
突然、クリーナが光を放つ。それにじゅらいが呑み込まれる。光が収まった時には、もう
じゅらいはそこにはいなかった。燈爽が店外に転移させたのだ。
そして、店内には燈爽だけが残った。
「ソルクラッシャー!!」
「夢幻張りせん乱舞!!」
「オラァッ!!」
「ゴルディ○ン・ハンマァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
青光が、張りせんが、灰の炎を纏った拳撃が・・・そしてピコピコ・ハンマーが(笑)「じゅらい亭」
に炸裂する。
「あうっ!?傷一つありませんよっ!??」
攻撃の後、ゲンキが壁を見て叫ぶ。それに幻希が、壁に近付き調べると。
「結界張られてやがる・・・。やるな、燈爽ちゃん」
そう、「じゅらい亭」は燈爽(クリーナ?)の張った結界で防御されていた。
「中にも入れませんし・・・どうします、レジェ?」
ゲンキが店を見つめながら押し黙っているレジェに問う。すると、レジェは困ったような顔
で頭をかきながら言う。
「どう・・・と、言われましても・・・。冗談でここまで怒られるとは思ってませんでしたからねえ・・・?」
前言撤回。「困ったような」ではなく、心底とことん「困って」いるようだ。
「うーん・・・燈爽ちゃんが機嫌直してくれねえと店に入れねぇな・・・」
「そうだね。ということは、燈爽ちゃんの機嫌を直す方法を考えないと・・・」
「燈爽ちゃんの機嫌を直す方法ダスか・・・難しいダスな・・・」
幻希の言葉にゲンキが頷き、ボルツが悩み始めた。今の燈爽は、店内の客を全員外に
追い出した事からも、かなり怒っているだろう事は分かる。それでは、一体どうすればいい
のか?と、レジェも含めた皆が悩んでいると、
「レジェの借金が無くなれば、機嫌を直してくれるのでは?」
じゅらいがそう提案する。その提案にゲンキの目が光った。
「(☆_☆)それは、つまり・・・・・・お金を稼いでくればいいという事ですね?」
「え?あ、そうだね?」
突然なゲンキの言葉にじゅらいがうろたえながらも適当にあいづちを打つ。
「そうですかっ!では、行くぞボルツ!!」
「おうっ!(ダス)」
じゅらいが頷いたのを確認し、ゲンキは突然あらぬ方向へと歩き始める。ボルツもそれ
についていく。それを見て、レジェが慌てて声をかけた。
「ちょっ!?ゲンキさん、ボルツさん!!何処に行かれるんですか!?それに、僕の借金
ですから、僕が・・・」
「自分の借金は自分で返す」と言うのだろう。が、ゲンキは振り返ると言った。
「いやぁ、燈爽ちゃんに機嫌を直してもらわないとじゅらい亭に入れませんからねぇ。それは
嫌ですから」
「オラもここは好きダスしね。任せてくれダス、レジェさんっ!オラ達が大金持って帰って来
るのをっ!!(ニッ)」
ゲンキに続けてボルツも言う。そして、2人はそのままダッシュで・・・何処かへと走り去った。
呆然とするレジェ。
「おい、レジェ」
と、突然レジェの方に幻希が手を置く。見るとじゅらいも側にいた。
「俺達も・・・バイトするぞっ!あの馬鹿・・・何をする気か分からねえが・・・負けられっか!!!」
「拙者達も手伝うよっ!頑張ってお金を稼いで燈爽ちゃんの機嫌を直そうっ!!」
そう2人はレジェを励ます。それで、レジェは何だか希望が湧いてきたような気がした。
「そうですね、頑張りますっ!さあっ!バイトを探しましょう!」
こうして・・・「じゅらい亭・『燈爽ちゃんの機嫌をバイトして直そう』作戦(まんまや!)」が
開始された。
レジェ、燈爽ちゃんゴメンネッ!!(春麗風^^;)