プロローグ




現在より、7,000年の昔…この地球には、科学技術の発達した文明が繁栄していた。

人類は、地球と月の資源をただひたすらに消費し、地上のすべてが人工のモノで覆われ
ようとしていた。

地球環境問題については何年もの間研究が重ねられ、人は生命体としての地球を守れる
と信じていた。その努力を怠ったつもりも無かった。

だが、星の体は人類の予想をはるかに越えるスピードで病んでいき…人類がその計算の
甘さに気付いたときには、もはや手遅れだった。

空には飛ぶ鳥さえ無く、海は悲壮な静けさに満ちていた。

絶望と後悔の念に囚われた人類はやがてパニックに陥り、死に物狂いで宇宙に脱出した。
あてども無い宇宙の旅…その果てには、やはり何も無かった。

ごく少数、地球に残った者達…さまざまな事情や理由、想いで留まり、星と運命を共に
することになった者達は、いつか本で読んだ美しい地球の夢を見ながら、緩やかな死を
受け入れようとしていた。




――それは静かな夜だった。

ラジオからは、懐かしい故郷を想う歌がゆったりと流れていた。世界中で唯一つのラジ
オ放送に、すべての人間が聞き入っていた。自然と涙が出た。

涙は頬を伝い…地面に落ちる。すべての人類の涙が、同時に大地に染み込んだ…。

その時。

トクン!

大地が鼓動した。生きとし生けるものすべてが、何かの「始まり」を感知した次の瞬間、
空が輝いた。
青く大きな彗星が、地球の上ではじけて降り注いだのだ。
空も大地も海も、光と歌の奔流に飲みこまれ、真っ白に染まった。

それが【無垢への回帰】の瞬間だった。





目覚めるとそこは、すべてが違う世界――地球は命の喜びで満ちあふれ、おとぎばなし
で聞いた幻獣が踊り、精霊がこの世の理を歌う世界へと生まれ変わっていた。

これはそこから始まる物語。新しい歴史、「星暦」という時の年輪に刻まれてゆく記憶。

そして緩やかに時は流れ―――










再び、動乱の時代がやって来る。








■ 突入セヨ ■



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