じゅらい亭日記 超・暴走編

これらの料理を信用しないでね♪ 魔王との約束さ♪
冒険者> ゲンキ
記録日> 05月15日(金)01時05分33秒
「じゅらい亭日記──超・暴走編3」(2♪)



「激戦! 特級厨士と滅殺厨士!! あと、一般参加者」

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『では、これより第一回 (第二回もあるのか?) <じゅらい亭料理激闘編> 開始です!』

パーン!

 可奈がじゅらいの合図と共に、クラッカーを鳴らす。同時に、材料調達に走るルウやゲンキや参加者達。
「これと・・・これと・・・・・・これは駄目だ!」
「ふむ・・・・・・美味しそうですねぇ・・・・・・」
「きゃー♪ キャッビアキャビア♪」
「やっぱり、これとこれが・・・・・・?」
「肉はどこだーっ!!」
 口々にぶつぶつ呟いたり、喜んだり、叫んだりしながら材料を確保する参加者達。
 そして、それぞれが必要な材料を揃えると、ステージの上にいたじゅらいが何やらリモコンのスイッチ
を押す。

ガゴーン!

゛オオォォッ?!゛

 突如、床から審査員とそれぞれが座る審査員席が出てきて、観客が驚きの声を上げる。同時に、
流れ出すスモーク。
『さあ、というわけで今回の審査員の方々と、特別にお招きした審査員長をご紹介します!!』
 可奈がマイクを持ちながら、審査員席の右側に座っている者から紹介を始めた。順々にスポットライト
に照らし出される審査員達。
『まずは、「食べさせてくれるなら食べます」と豪語する改造魔人ことJINN様!』
「カレーが食べたい」
『次に、「拙者の妹の料理に勝てるかな?」と今回の事にはあまり関係無い事をおっしゃっている焔帝
様!!』
「ルネア。兄はお前の料理も食べたいぞ」
『さらに、やはり食べる事に関してはじゅらい亭のナンバー1と称されるこの方! 「サンマは七輪で焼く
にゃ!」のフェリさん!!』
「美味しいにゃ! (まだ食べてません)」
『そして、やはり店主! 真っ先に志願されました「いっぺんゲンキさんのレバニラを食べてみたかったで
ござるよ」じゅらい様っ!! 以上、4名が今回の審査員です! そして、特別審査員長は無論あの方!!』
 可奈が一際大きな声で、ステージ中央を指差す。すると、床が割れて物凄い勢いで何かがせり出して来た!

ゴーッ!! ガキョーン! ガキョキョキョーン!! ガゴン・・・・・・ビカッ!!

「オホホホホホホホホホホホホホ!!!」
 やがて、十数Mの高さはあろうという、円筒形の柱がそそり立ち、上から金色の輝きと共に、ゲンキに
とっては恐怖の象徴ともいえる声が響く。
「こ、この声は!?」

ザワッ・・・・・・

『そうっ!!』
 ゲンキの声に反応するように、周囲の常連達の中に戦慄が走り、可奈が楽しそうにその名を呼ぶ。
『ゲンキ様の主にして、絶対無敵の大魔王! 「部下G、あんたマズイモン作ったら御仕置きよ?」こと、
悪夢の王・L様が特別審査員長ですわ!!!』
「ひああぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああッッッ!!??」
「どこに行く?」

ドベチッ!

 一目散に逃げようとしたゲンキの足を掴むルウ。顔がステージの床と激突して、痛そうな音がした。
「何でL様があぁぁぁぁぁぁぁっ!!? よりにもよって゛料理勝負゛にぃぃぃいいいいっ!!?」
「なーに言ってんの部下G? 料理って言ったら、あたし以外に誰を指すってーのよ♪」
 床に転がったまま泣き叫ぶゲンキの側に降り立つL様。
 ゲンキは、そのL様の顔を見上げキッパリと言い切る。
「お願い♪ とりあえず、そこのルウさんにしませんか!」
「駄目」
 ゲンキの祈りにも似た゛お願い♪゛を、一撃必殺で却下するL様。さらに、ルウが顔を覗き込んで・・・
ボソッと囁く。
「僕との勝負を放り出して逃げるなよ?」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああん!!」
 号泣するゲンキ。だがその時、無情にも料理勝負開始の鐘が鳴り響いた。



「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
 勝負が開始されて、最初にゲンキが始めたのは野菜の皮剥きだった。泣きながら、ピーラーでシャリ
シャリ剥いていく。ほとんどヤケである。
「おいこらゲンキ! 貴様、料理人なら包丁かナイフで皮剥きしろ!」
「僕は皮剥きが苦手なんです!!」
 怒鳴るルウに叫びかえしてゲンキ。だが、ジャガイモの皮を剥いた時点でピーラーを片づける。
「タマネギとニンニクは手で皮取れますからいーですねー♪」
『あ、ゲンキ様がタマネギの皮を剥いて切り始めました! でも、全然泣きません! 流石ゲンキ様で
すわ!!』
 と、ゲンキの行動にばかり注目している可奈が実況する。すると、観客の1人がツッコんだ。
「サングラスしてるからじゃねーの?」
 その通りである。その時──。
「とんとんとんとん♪」

タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!!

『あ、一般参加の・・・・・・楊様がゲンキ様と同じような事をされています! いくつかの野菜を物凄い
スピードで刻んでいきます! 速い! これには、ルウ様も呆然と・・・・・・ああっ!?』
 可奈が手を止めているルウを見て、素っ頓狂な声を上げる。観客の視線が彼に集まる。

゛オオオオ?!゛

「ふふん」
『なんと、ルウ様は切っていた材料をミキサーにかけています! これには、楊様の包丁も敵いませ
ん! 一体、これで何を作ろうというのでしょうか!?』
 観客達の注目を浴びて、見えない笑みを浮かべるルウ。可奈の実況は続く。
『なかなか驚くべき光景が繰り広げられています。では、他の選手は・・・・・・おっと、一般参加のクレイン
様が、奇妙な事をしています・・・・・・ヤカンでお湯を沸かしていますが・・・・・・?』
「これ、結構美味しいんスよ♪」
 と、何やら取り出すクレイン。
『ああーっ!! カップ麺です!! 日○のカップヌード○です!! 料理でしょうか、これは?! 何故
材料にこれがあったのかという疑問も残ります!』
 可奈のセリフと共に、観客達が゛Boo! Boo!゛と騒ぐ。しかし、それをゲンキが鎮めた。

ジュアッ!!

「てりゃあっ!!」
 刻んだ野菜をフライパンに放り込むゲンキ。後は、素早く炒め始める。
『これはゲンキ様、炒め物を作られるようです。しかし、言い忘れてましたが勝負は3本勝負。最初か
ら油っこい物は審査員の方々も辛いのではないでしょうか?』
「ご安心を。そうだと思って考えてますから」
 ジャッジャッとフライパンを振りながらゲンキ。と、何を思ったか野菜に火が通ったところでお湯を
注ぐ。
『こ、これは!? ゲンキ様もカップ麺を?!!』
「違いますっ!!」
 驚く可奈に、フライパンの中をかきまぜながら叫びかえすゲンキ。何故に、これでカップ麺を作らな
ければいけないと言うのだ?
 と、それらを見ていたルウが何やらボウルでこねながら口を開く。
「おもしろい事をするじゃないか、ゲンキ? でも、そんな事では僕には敵わないぞ! ははははは!」
「127点・・・・・・」
「いらんっ!!」
 高笑いしてのセリフに、ボソッとゲンキが言うと、ルウに怒鳴られた。聞こえてるだけ大したものだ。
「美味しいお野菜ですね〜♪」
『あ、燈爽様。自分で作ったサラダを全部食べてしまいそうです。燈爽様ー? 全部食べてどうするの
ですかー?』
 パクパク味見する燈爽に可奈がツッコミをいれ、観客達が大笑いする。
「そうですねー♪ 村八分って言いますし〜♪」
『腹八分です』
 照れながらの燈爽のセリフに、またもツッコむ可奈。レジェンドが頬をポリポリ掻いている。
「出来ましたっ!」
 と、カップ麺を掲げるクレイン。お湯を注いで3分経ったようだ。
『はい、では料理が出来た方から審査員の所に持って行ってください』
「わっかりました♪」
 カップ麺の乗ったトレイを持ってタッタカ走るクレイン。しかし──!

ガッ ドバシャー!!

『あーっ! クレイン様、転んでしまいました! カップ麺も床に撒き散らかされてます!! 掃除する
看板娘様達は大変です!』
「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 頭を抱えて泣き叫ぶクレイン。審査員達は、それを見ながら何やらメモを取る。採点でもしているの
だろう。
『と、ともかく気を取り直して・・・・・・もう料理が出来た方はおられませんか?』
「出来ましたぁ〜♪」
 キョロキョロする可奈に燈爽が手を上げて、サラダを持って審査員席に駆け込む。
「サラダですか」
「なかなか大量ですな」
 JINNと焔帝がサラダを皿に取りつつ言う。たしかに、かなりの量だ。どうやら、味見した後に作り足
したらしい。
「にゃぁ、野菜かにゃあ♪ 美味しいにゃー♪」
「猫って野菜好きでござったかな?」
「まあ、いーんじゃない? それより、美味しいわよ燈爽ちゃん♪ 部下Gなんか、野菜苦手なのよ? 
偉いわねー♪」
 パリパリとレタスを食べるフェリに不思議そうなじゅらい。L様は、どうやらかかっていた和風ドレッ
シングが気に入ったらしく上機嫌だ。
「あ、私も出来ました」
「私も」
 と、楊とnoc (いつのまにか参加してる) が料理を審査員の前に並べる。
 楊は野菜と豆腐の煮込み。なかなか美味しそうではある。
 nocは、ネギのような野菜を軽くあぶって特製のアッサリしたソースをかけた物。
「ほほう、楊さんの料理は栄養ありそうです♪」
 JINNが楊の煮込みを喜んで食べる。セリフが彼の食生活を物語っている。
「この野菜美味しいですな。ぬぅ、やりますねnocさん」
「本当ね。うちの馬鹿にも見習ってほしいわ」
 焔帝とL様は、nocの料理に好評価を抱いているようだ。
「拙者、どちらも好きでござるなぁ♪」
「フェリもどっちもいいにゃぁ♪」
 と、こちらは2人とも心底幸せそうな、じゅらい&フェリ。楊もnocもホッとしている。
「ふっ・・・・・・僕も出来たぞ!」
 と、先程から何やら湯気の立つ中華鍋に放り込んでいたルウが、それらを一気に引き上げ器に盛り
付ける。
『あ、ついにルウ様も料理が出来たようです!』

ドン!

「さあ、食べてくれ!」
 と、何故か偉そうにルウ。その態度に、ムッとしながらも焔帝が最初に手を出す。
「・・・・・・何だ、これ?」
 春巻きのようなそれを見ながら、不思議そうな焔帝。衣が透けて、中の具が見える。
「ミキサーで潰した野菜を鶏の肉と混ぜて、具にした物を衣に包んで少し濃い目のスープで煮た。
味がある程度染み込むくらいにな」
「ほほう?」
 説明に目を丸くしながらも、一口で食べる焔帝。他の審査員達も箸を伸ばす。
『どうですか、審査員の方々?』
 一口食べて無言になった審査員達に可奈が訊く。観客達もジーッと見守る。
「・・・・・・美味しひ・・・」
 L様が呟く。よく見ると、感涙までしている。
「ナイスだルウ殿っ!!」
「にゃー!」
「スルッと食べやすくていい感じです」
「ルウ殿、うちで働かない!?」
 誉めちぎる審査員達。観客がどよめく。そしてその中、ルウがニヤッとする。
「はははっ! スープは、3日かけてダシを取り、アオシン家秘伝の味付けをしたものを持参したんだ!
 美味くて当然だろう!!」
 覆面の下で勝ち誇った笑みを浮かべるルウ。だが、後ろからゲンキがヌッと出て来た。
「う・・・・・・わぁっ!? 音も無く出て来るな?!!」
 驚いて横に逃げながらもゲンキのフライパンには触れないようにルウ。料理勝負に来たのに、相手の
料理を駄目にしては意味が無い。
「どうも♪ というわけで、僕の料理も出来ました♪」
『あ、いつのまにかゲンキ様の料理も出来ていたようです。では、審査員の方々どうぞ』
 笑みを浮かべるゲンキに、可奈が慌てながら審査員達を促す。
「はい、ではどうぞ」
 フライパンの中のスープをカップに分けて、審査員達に渡すゲンキ。すると、じゅらいが不思議そう
な顔をした。
「あれ? ゲンキ殿、牛乳入れてなかった?」
「ええ」
 じゅらいの質問に、ニヤッとしながらゲンキ。JINNも同様に怪訝そうな顔だ。
「辛そうな匂いの割に、色は味噌汁に似てません?」
「そうですか? まあ、冷めないうちにどーぞ♪」
「にゃ?・・・・・・」
 JINNの質問にも笑みを浮かべるゲンキに、とりあえずスープに口をつけるフェリ。その目がクワッと
見開かれる!
「熱いにゃぁぁぁぁぁあああああああああっ!!!!???」
「あ、フェリさん猫舌でしたね! すみません!!」
 スープの熱さに涙するフェリに、慌ててスープを冷やそうとパタパタ扇ぐゲンキ。その騒ぎを無視し
て、他の審査員はスープをゴクゴク飲んでいる。熱くないのか?
「ぷはー。ピリッと辛いですが、なかなか飲みやすいですね」
「韓国の辛味噌を溶いてから、牛乳を入れましたから」
「炒めた野菜が入ってるにしては、あまり油っこくありませんでしたね?」
「皆さんが料理を食べておられる間に、紙で取っときました」
「なんだか、熱い料理です。ナイスだゲンキさん!」
「ありがとうございます♪」
 審査員達のそれぞれの反応に、逐一答えるゲンキ。最後に、L様と向き合う。
「これって、あんたよく作るわよね?」
「は、はい」
 緊張しているゲンキの答えに、「ふーん・・・・・・」と呟いてからL様は続けた。
「まあ、いつもの味ってのもいい感じね」
「・・・・・・あ、ありがとうございます」
 ニコッとするL様に、誉められたらしいので安心するゲンキ。冷めてきたスープを一口だけ飲んで、
フェリも「美味しいにゃぁ♪」と喜ぶ。ルウは「チッ」と舌打ちした。
「なんだか、食欲の湧いて来るスープでした。ゲンキ殿、また作ってね♪」
 じゅらいが笑顔を向ける。「77点」と言ってから、ゲンキは「もちろん♪」と応えた。

 そして、それぞれの得点は、クレイン・3点。燈爽・72点。楊・75点。noc・88点。ルウ・97点。
ゲンキ・90点だった。


続く

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