じゅらい亭日記 連続乱闘編

そして風は <4>
投稿者> JINN
投稿日> 06月21日(日)01時13分00秒


目標が時魚に移る。陽滝の近くいたnocが爪でカバーに入る。
が、陽滝は簡単にすり抜ける。目標は変わらない。
一人を除く全員が陽滝を止めに入ろうとするがそれもかなわず。
「え?」
剣は縦に振り下ろされた。普通の人間なら真っ二つになるエネルギーを持って。
「まずは ひとり」
JINNは、まるでゲームをしているかのようだ。
刹那、影が走る、剣と時魚の間に。いとも容易く剣を受け止めた。
「おや?」
思惑が外れて面白くない、JINNの心境はそうだった。
「ハスター、あんた今まで何してたの」
アクリが問いかけ答えを待つ。
そのまま剣を弾き飛ばした影、ハスターは無言のまま踏み込む。
肘撃が鳩尾を、裏拳が顔面を、掌打が胸を、廻し蹴りが脇を襲う。両者共に離れる。
構えを取ったハスターに対し、連携を叩き込まれた陽滝は少し苦しそうではあった。
そして、じゅらいのハンマーがハスターを襲う。
「うちの陽滝に何するか」
かろうじて光にはならなかったらしい。

「おい、ゲンキ」
「・・・・・」
「聞いてるダスか?」
「・・・・・」
「聞いてないダスな」
ボルツは確認を取ると、ゲンキの後頭部に思いっきり蹴りをかました。
「いってぇなぁボルツ〜」
「人の話を聞かないのが悪いダス」
じゅらい亭の死に方知らずの2人組がここにいた。
”ここ”とは言うまでもなく、JINNの研究所である。
この2人に壁二つ隔てて乱闘が起こっている事走る由も無い。
暗い通路を2人は歩いて行く。なぜここに2人がいるかと言うと、
「ホントにお宝があるんダスな」
「この遺跡は新しいから、新しいお宝がごっそりに決まってるじゃないか」
どんな理屈だ、どんな。
「新しい事は良い事だっ♪」
などと歌いながら足取り軽くゲンキは歩いて行く。
ボルツは立ち止まっていた。ぐっとこぶしを握る。
「んな訳あるかっダスっ!」
見事としか表現できないような蹴りツッコミが入る。
勿論ゲンキの後頭部に、である。
ぷしうぅ〜と音を立ててゲンキが崩れて行く。
「また、つまらぬ者を蹴ってしまったダス」
「つまらぬ者とはなんだ!」
跳びおきてボルツに食って掛かるゲンキ。後頭部には足型がしっかりと。
「新しい所にお宝ごっそりなんてあるはずが無いダス」
ボルツの正論に対して、ゲンキは余裕を持っている。
「”魔王呪法”なんか使ったみたいダスが、今までにそれで言い当てた事はないダス」
ゲンキはまだ余裕を持っている。
「何か確実な証拠があるダスか?」
ここでゲンキはにやりとほくそえんだ。
「ふっ、これがある」
ゲンキの手には手帳サイズの物が乗っていた。それが点滅する点を映している。
「この”お宝探知器”さえあれば目をつむっていてもお宝に直行さ」
「また怪しい物を作ったダスな」
にやりとするゲンキに水を差す。
「うんにゃ、幻希にもらった」
ボルツは信じられない顔をしている。
「作者の大切さが分ったとみえる」
「なら、多少は、安心ダス」
2人は納得してまた歩き出した。
ただ一つの間違いは、”お宝探知器”に”魔人印”が書いてあった事である。
改造魔JINNの作品には必ずといっていいほど付いている印が。

向かい合う陽滝とハスター。
を後ろから殺気立った目で見つめるじゅらいと幻希。
「相変わらず世渡り下手ねぇ〜」
剣を受けた腕をさすりながらアクリは言った。
その右腕には傷らしい傷は何一つ無かった。
これがアクリの無敵たる所以の一つであった。
「今度陽滝に手ぇ出したら殺すよ」
「男としての恥を知れ、恥を」
板挟みと言う表現がこの状態だろう。
何時の間にかブローチには縦線が3本になっていた。
そこに2本の横線が加わる。「王」の文字を横に傾けた形になる。
エネルギー無限、誰とも無くその事が頭に浮かぶ。
剣も2本に増えていた。

「ほっほぉ、これまた楽しくなるかな」
さっきの邪魔物が一転して玩具になったことにJINNは喜びを憶える。
にやにやしながら見下ろすJINNにハスターが言い放つ。
「4年前の借りを返しに来た」
JINNがぴくりと反応する。
「IXASと言えば分るか?」
JINNは何かわかったようだった。
「ふははっ、お前はあの時のレプリカか」
ハスターは答えるかのように構えを解く。
「で、あの時の何が気に入らなかったってんだ?」
「全てが。」
すっかり2人の会話に待ってしまった。
「記憶のカスがねぇ」
他の物を食らってその能力を我が物とする。
そんな者達にとって不要な物がある。
それが個人の記憶、感情、人格、その者のパーソナリティである。
時には必要とするが、ほとんどの場合それは不要とされる。
不要な物は捨てる、その捨て場として造られた者が”IXAS”と呼ばれた。
波長の同じ者を造り情報の移動を容易にする。
平たく言えばごみ箱である。
「20余人の人格を統合するのに2年」
「それはご苦労な事で」
嘲笑とともに吐き捨てるJINN。
周りは話に付いて来てなかった。
だが、はっきりした事がある。
”ハスター=IXAS”である事。そしてもう一つ、
「それなら・・・・・」
フレイは小さくぼやいた。

「もらったっ!」
話の間に間合いを詰めていたシャルが飛び掛かる。
右腕の刃がJINNを襲う。
「30点、奇襲に掛け声はいらないよ」
あっさりと止められる。
「手癖の悪い娘だねぇ」
そう言うが早いかシャルの首筋に食いついた。
「ゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」
叫び声、骨の砕ける音もする。肩ごと左腕を持っていかれた。
蛇のように腕を飲み込んだJINNは思い出したように言った。
「お前、あの時の娘か?6年前の」
痛みの為に意識がもうろうとする。それとも出血の為だろうか。
「シャルっ!」
ユリィが何かを放つ。
それは真っ直ぐにJINNに向かって行く。
「イースの遺産らしいが、いかせん使い方がな」
難なく掴み取る。手の内の物を見てあきれた。
「しかもレプリカと来たか」
鳥に似た物が音を立てて崩れ去る。
「ちぃっ」
直後に幻希が飛び込んだ。シャルを救う為、JINNを倒す為に。
2人の間に器用に剣を滑りこます。
そしてJINNの両腕を切り落とした。
「ほう、90点」
驚いたようなそぶりを見せるJINNに幻希はさらに滅火を放つ。
「まだまだだね」
真上に跳んでいたJINNの脚が弧を描いて幻希を襲った。
彼の下半身には二本の足が付いていた。
もろに蹴りが入る。それ程度でくたばらないという事くらい分っていた。
幻希が改めてJINNに振返った時、彼は腕を組んで空中にいた。
そう、もう腕が生えていたのである。
その回復速度はゲンキなみだっただろうか。
「君もなかなかの者だねぇ、私の糧にぴったりだ」
それが当然と言うように幻希の目の前に降りて来る。
反応できなかった、その言葉が幻希の脳裏をかすめる。
そして、反応できなかったこの場合殺られる、本能はそう告げていた。

オォォォォォォォォォォォ
突如コロシアムの中央から雄叫びが上がる。
そう、陽滝とハスターの睨み合ってる所から。
胸のブローチには横になった”王”という文字に斜めの線が入っている。
知識ある者にはその状態が手に取るようにわかっていた。暴走。
「マトモじゃない精神状態に無理矢理力を詰め込むから」
アクリは呆れ顔で誰に聞かせるでもなく説明を入れる。
「精神崩壊までの時間は・・・・・」
「10分弱、わかっている」
向かい合ったままに答えるハスター。
構えが待ち型の”猫足”から攻め型の前傾に変わる。
「そっちは任せた」
その言葉を最後に”風”同士の戦いが始まった。

「ここは少し危険・・・・・か」
JINNの方はいたって平常通りだった。
「ひとまず奥に引くか」
幻希の方に向き直って一言付け加える。
「私を倒す気なら付いてくるんだな」
風に溶けるように消える。
駆け付けたクレインとヴィシュヌによってシャルの止血は行われた。
「だめですぅご主人様ぁ〜、腕までは直せません〜」
加えてヴィシュヌは存在自体が消えた物は直せないと付け加えた。
「倒すしかないのか」
幻希はコロシアムの奥、JINNのいると思われる方を睨む。
「そうですね」
ユリィもその気だった。
そこへ移動したアクリたちが到着した。言い換えれば避難したとも言うが。
「貴女には無理ね」
着くが早いかアクリはユリィに向かって吐き捨てる。
「どうしてです?私にはまだ他にいろいろありますのよ」
「どうせ、レプリカでしょ」
痛い所を突く。ユリィの装備のほとんどはイースの遺産のレプリカであった。
「そんな粗悪な物が効くと思ってるの?」
うつむくユリィをよそ目に、さらにアクリは続ける。
「そんな事しなくても、後で可愛がってあげるから」
「姉さん・・・・・」
一瞬うなずきそうになったユリィをフレイが止める。
もし、止めてなかったらどうなっていた事か・・・・・。

「で、何処にお宝がごっそりダスか?」
”お宝探知器”の示す点滅位置に来た2人。
そこにはお宝と呼ぶにはには程遠い物があった。
この世の半分の人たちにとってはお宝かもしれないが、今の2人にとってはどうでも良い物。
さらわれた街の娘たちが横たわっていた。一人一人がベッドに横たわって。
その中にただ一つ空いているベッドがあった。
「で、ここでどうしろと言うダス?」
「寝ろって事じゃないかな?」
空いているベッドにゲンキは横たわった。
「男と寝る趣味は無いダス!」
ボルツは寝ているゲンキに肘をお見舞いした。
「僕だってそんな趣味はない!」
ゲンキも負けずと蹴り返す。
「何事だ!」
2人がどたばたやっている所にJINNが来た。

正確にはじゅらい亭に生息するJINNに酷似した者だったが。
「あっJINNさん、こんにちは」
丁寧に挨拶をするゲンキ。そのゲンキにJINNに似た者は槍を突きつける。
「JINN様の名を気安く呼ぶな!それにお前達は何者だ!」
「やだなぁ忘れたんですか?ゲンキとボルツじゃないですか」
笑いながら答えるゲンキ。
「知らん、それに私の名はJINN様ではなくIXASUだ」
そう言ってIXASUと名乗る者は槍を振り回す。
「ちょっちょっとJINNさん、それはあんまりじゃ」
「と、とにかく謝っとくダスか?」
斬り刻まれながらも逃げ出すゲンキとボルツ。
普段と違うと気付いたボルツがゲンキに提案してみる。
「何かいつもと違う人みたいダス」
ここでボルツは大きな間違いを二つ犯した。
一つはJINNは最初から人間ではなかったという事。
そしてもう一つは、ゲンキに提案をした事である。
「違う人なら好都合、魔王呪法”瞬間落し穴”」
そう言い終った時にはゲンキとボルツの足元に大きな穴があいていた。
そこに落ちる2人、そして穴は塞がった。
「どうだ、見たか」
落し穴で一つ下の階層に来たゲンキが自慢気に言った。
刹那、ボルツは思いの丈を右足に込めてゲンキに送った。
「そういう物は相手の足元に作るダスっ!」
確かに2人は助かった。しかしここはとんでもない所であった。
JINNの創ったモノの保管庫である。
怪しい奇声を上げる生き物や人間型のモノが一つ一つ檻に閉じ込めてあった。
その檻の一つに2人は落ちたのである。
唯一の救いは、その檻は空だったという事であろうか。



URL> かなり文章狂っとるな、復旧は失敗か?

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