「−まほろば− なんてステキなありふれた日々」第壱話エピローグ 藤原眠兎



−エピローグ−



 ジリリリリリリリリリリリリリ…
 遠くでやたらとけたたましく何かがなってる。
 何か?
 これって目覚し時計の音じゃあ…
 何で?
 たしかあたし光流くんと一緒にそのまま道路で…
 ジリリリリリリリリリリリリリ…
 目覚ましらしい音は鳴りつづけている。
 はっと気付いてあたしはがばっと起きた。
 布団の中いる、あたし。
 …全部、夢!?
 布団から這い出ると、ご丁寧にパジャマまで着ている。
 ああああぁぁ…あんな目にあって苦労して、告白までして、夢オチ!?
 あたしはもう何もかも嫌になって、うるさい目覚ましを止めると、布団を頭からかぶった。
 夢オチなんてあんまりだぁ。
「お〜い虹〜、朝だよ〜起きてくれないとおいちゃん悲しいぞ〜」
 部下Gおじさんの声が聞こえる。
 うーん、でも、全然起きる気しない…
 だって、夢オチだよぉ?
 うー…いっそ夢の中で暮らしたい。
 …
 ……
 ………あ。
 なあんだ。
 別に夢オチでもいいんだぁ。
「虹〜?」
 もう一度部下Gおじさんが呼ぶ声が聞こえた。
「今起きるー」
 そう大声で言うと、あたしはがばっと起きた。
 別に夢だっていいんだ。
 だって、また、『好きだ』って言えばいいだけだもん。
 気持ちの入れ替えが早いのはあたしのいいところだ(と思っている)。
 いつものように身支度を整え始める。
 制服に着替えて、髪の毛をとかして、バンダナで髪の毛を…って、あれ?
 赤いバンダナ。
 でもそこにあるのはあたしがいつも使ってたのじゃなくて、光流くんからもらったヤツだっ
た。
 え?
 あれ?
 じゃあ、夢じゃあなかったんだ…
 そう思うとちょっとだけほっとした。
 夢じゃあなかったとわかると、無性に光流くんの顔が見たくなった。
「虹〜?」
 もう一度部下Gおじさんがあたしを呼ぶ。
「今行く〜」
 あたしは返事をすると、元気よく部屋を飛び出した。
 光流くんに聞きたい事があった。
 あたしが眠っちゃう前にほんとに返事をしてくれたのかどうか。
 それにお父さんとお母さんにも好きな人が出来たって話がしたい。
 やりたい事ばかりがたくさんあって困っちゃう。
 あたしは手早く朝ご飯を食べると、歯を磨いて顔を洗った。
 その所要時間約10分。
 さあ、準備は整った。
「いってきまーす!」
 あたしは玄関から勢いよく飛び出した。
 ここからあたしの日常は始まるのだ。
 ふと、あたしは透き通るような春の青空を見上げてみた。
 青く広い空にお日様が気持ちよさそうに輝いている。
 きっとこれから始まるのはいつもと同じ日常だ。
 でも、それでも"大好き"と思える人と一緒ならどれだけ楽しいのだろうか。
 ありふれた日に見えたって、きっとそれはステキな一日。
 あたしはそんな事を考えながら光流くんと美影ちゃんの家へと走りはじめた。
 今日という一日をステキな一日にするために。









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